去る2021年6月13日は、弊社の70回目の創業記念日でした。私たちの会社は、家具製造業を生業とする岐阜の小さな会社ですが、こうして70周年を迎えられましたこと、これまで支えてくださったすべてのみなさまへの心より感謝の気持ちでいっぱいです。
創業記念日ということで、ikususu(株式会社ダイマツファーニチャー)の歴史話を少し。
遡ること70年、私の祖父、田中秀一が木管加工を主とする工場を立ち上げ、木製のミシンボビンの製造をしておりました。昔のミシンの木製ボビンといえば、みなさまどんなものをイメージなさるでしょうか?私は子どもの頃からこの話を聞くたびに、「ボビン」というより、お伽話に出てくるような「糸巻き」のイメージを思い浮かべたものです。
その後、高度成長期に入る頃でしょうか、その木管を作る旋盤加工技術が、椅子の脚に転用出来るのではないかということで、椅子を作り始めたのがikususuの家具作りの原点です。
下請け企業として、さまざまな企業から製造を依頼された椅子を大量に製造し、卸させていただいていた時代を経て、私の父、田中俊朗が自社オリジナルブランドとして、無垢材と天然オイルを用いたシンプルでナチュラルなデザインを基調とする ikususuを立ち上げたのが、現在のikususu家具の始まりです。それ以来、弊社はオリジナルブランドikususu製品のみの製造と販売を行うようになりました。
その父が、2019年の秋が終わろうとしていた頃、志し半ばに現役のまま他界してしまいました。その後、娘の私が事業を引き継ぎ、今に至るのですが、この度無事、70周年という節目を迎えることが出来ました。
現在はベテランから若手まで、文字通り老若男女、個性豊かで愉快、作り手としての技術と誠実さ、家具づくりへの情熱や夢を持つ職人たちがikususuの家具を、毎日作っております。
写真は私に代替わりしてから初めて、私のスケッチを元に照井工場長が設計して、現場の職人さんたちが製作してくれたキャビネットです。
現在は仙台店限定でのみご覧になっていただける参考商品ですが、ウォールナットとアルダーという樹種の違いだけで、同じデザインでもこれだけ雰囲気が変わるのが面白かったので、当初予定していた展示案を変えて、ぴったり背中合わせで展示してあります。
このキャビネットの脚は、比較的長いテーパー丸脚となっていて、制作工程で「旋盤加工」を使っています。実はikususuの家具たちは(特注品は別として)シンプルな直線がメインとなっていて、丸脚や旋盤加工を多く使ったものはないのですが、70年の歴史を遡って考えてみれば、木管から始まった会社のむしろ原点とも言える要素を持つ脚と言えるかもしれません。
組みの加工はikususu定番のロッキングではなく、多くのお客さまからご好評いただいているテレビボードHAKOと同じ「留め加工」、取手は新しく取り入れた真鍮取手を使用しています。
ラグビーボールは、私が小さな頃、父の仕事場へ行くと置いてあったもので、子どもながらにかっこいい!と毎度思っていた記憶が鮮明に残っているものでした。本社の片隅で見つけたので、懐かしさとともに仙台まで連れてきて、創業70周年記念に飾っております。このラグビーボールも「旋盤技術」によって作られていて、ikususuに至るまでのダイマツファーニーチャーの歴史の1ページといったところなのです。
70年の歴史すべてを私は知りません。それでも70年という長きに渡って事業を続けて来れたのは、ご愛顧してくださったお客さまたちのおかげであり、毎日その手を使って家具を作るという仕事を続けてきてくれた職人さんたちのおかげであるということだけは、「たしかなこと」だと思います。感謝でいっぱいです。
これまでのikususuの歴史をベースに、これからのikususuは未来に向かって羽ばたいていこうとしている真っ只中にあります。会社は70歳の誕生日を迎えましが、これからのikususuの新しい挑戦と成長にも大いに期待していただきつつ、見守っていただけたら幸いです。みなさまに愛される企業となれますよう、社員一同ますます精進して参ります。今後ともご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします!
みなさまへの大きな感謝を込めて。
2021年6月13日
ikususu FURNITURE
株式会社ダイマツファーニチャー
代表取締役 田中翠